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ATMの運営コストを削減

 

KALが提案するマルチベンダー対応のATMソフト

ATMの運営コストが金融機関の負担になっている。コンビニATMの台頭や東日本大震災以降の節電対策による店外ATMの停止などで、手数料収入の収益機会が減少。一方で、ICカード認証の基本形移行は待ったなしで進展しており、システム対応にも多額のコストがかかっている。金融機関では運営コストを削減しつつ、ATMの戦略的活用が急務となっている。本稿では、ATM内で稼働するミドルウェアやソフトウェアを統一した際のコスト削減効果について概観する。

ソフト更新費用と警備会社の出動回数がコスト要因
ATM運営コストで額が大きいのは、ソフト更新費用と現金補充、障害対応などの作業員の出動費用。ATMの運営コストを削減するには、ソフト更新を効率化し出動回数を減らすことが重要となる。
しかし、金融機関では複数のハードウェアベンダーからATMを購入するのが一般的だ。ATMソフトはベンダーが開発しており、機種ごとにソフトウェアが異なる。そのため、ソフト更新が必要になった場合、開発・チェックを機種ごとに実施しなくてはならず、開発費用が膨大になってしまう。
また、警備・警送会社の出動回数削減には、現金装填量の最適化が重要だが、ATMソフトが異なるため、現金量の監視にも複数のシステムが必要になり、大きな労力・コストが必要になってしまう。

マルチベンダー対応のATMソフトで統一する
この課題を解決するには、ATMで使用されるソフトウェアの統一が最も合理的な処方箋となる。KALが開発するマルチベンダー対応のATMソフト「カリグナイト」は、ベンダーを問わず世界中のあらゆるATMで稼働し、現金預入機やプリンターなどのデバイスに対応している。同ソフトを利用することで複数ベンダーのATMが混在する環境であっても使用ソフトを統一できるため、大幅な運営コストの削減が可能になる。事実、コスト削減を主因とし、新生銀行やシティバンク、中国建設銀行など世界の13万台のATMで採用されている。
以下で、同ソフトを使用した場合のコスト削減効果を、ハード面、ソフト面、保守面の3つに分けて詳説する(図)。

(図:ATMソフト統一の効果)

①ハード面
同ソフトの導入により、自由にATMを選択することができる。そのため、ベンダー間で競争が発生しATM価格に下落圧力を加える。たとえば、国内ベンダーだけでなく、海外のハードウェアベンダーを選択することも可能になる。

②ソフト面
複数のATMソフトが使用されている状況で、ATMに新機能を実装する場合、ソフトの種類だけ更新プログラムの開発・チェックを実施しなくてはならない。ATMソフトを統一すると、それらすべてが1度の開発・チェックで完結できる。コストだけでなく、開発期間も大きく短期化できる。

③保守面
警備・警送や障害対応などを含む保守コストは、継続的費用のため削減効果が最も顕著にあらわれる。ソフトを統一することにより、監視の一極化が可能になる。現金の補充状況や障害発生時の故障個所などの監視を効率的に実行可能だ。また、現金の使用量予測機能も実装している。毎時の現金使用量をATMごとに計測・分析することでATMの現金装填量を最適化できる。補充回数や現金装填量を総合的に判断し、最もコストの少ない装填量を算出することができる。

以上のように、ATMソフトの統一は大きな効果を発揮する。しかし、恩恵はコスト面だけに止まらない。低コスト化はATMの機能拡張を容易にし、開発期間の短期化はきめ細かな顧客対応を可能にする。ATMソフトの統一は、顧客満足度の向上を実現し自行ATMの利用率向上にも寄与するのだ。

(インタビュー)
ATMソフトを統一し、コスト削減・収益拡大を両立する

世界中のATMで稼働するマルチベンダー対応のATMソフトウェア「カリグナイト」を開発するKAL。11年には、シティバンクやユニクレジット、中国建設銀行など世界の有力行への導入実績を評価され、英国の女王賞(国際貿易部門)を授与された。同社の創業者であり、世界的に著名なATMソフトウェア開発者のアラビンダ・コラーラ博士に国内ATMの特徴や収益基盤増強の方策を聞いた。

KAL, CEO - アラビンダ・コラーラ 氏

―日本国内のATMの特徴は。
振り込みなどで入ってきた現金を払い戻しなどで利用する循環型のATMが特徴だ。さらに、日本特有の機能が豊富な点も特徴として挙げられる。たとえば、ATMには現金が装填されているカセットが複数設置されているが、それぞれのカセットで現金の使用量を均等化する機能は日本独自だ。循環型ATMで現金使用量の分配機能が実装されているため、海外に比べ現金補充回数の削減が進んでいる。しかし、集中監視や現金使用量を予測・分析することで、さらにコストを削減する余地がある。ハンガリー最大手のOTP銀行でも、当社のATM監視システムを採用し、現金補充の最適化を実現した。障害発生個所などの調査も遠隔地から実行できるため、作業員の出動回数が大幅に減少している。

―国内ではマルチベンダーのATMソフトの普及があまり進んでいないが。
マルチベンダーのATMソフトは、ATMで使用するAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)の世界標準であるXFSに準拠している必要がある。これまで、日本の独自機能がXFSでサポートされていなかったことが普及の進まなかった最大の要因だ。しかし、現在では、日本固有の21機能すべてがXFSでサポートされている。今後は、ATMソフトのマルチベンダー化が進展していくだろう。

また、マルチベンダー化が進展していないために、国内のATMのハード価格は非常に高い。たとえば韓国なども、比較的少数のハードウェアベンダーがATMを生産していたが、マルチベンダーソフトが普及するにつれ、ハード価格が下落している。

―ATMの収益拡大に必要なことは。
顧客ごとのきめ細かな対応をATMで実現していくことが重要だ。コンビニATMと金融機関ATMの最大の差は、キャッシュカードをATMに入れた瞬間に顧客を特定できる点にある。顧客の特定ができないコンビニATMは、必然的に画一的な画面表示とサービスを提供せざるを得ない。しかし、金融機関ATMは顧客を特定したうえで、過去の取引状況などを踏まえた顧客ごとの画面表示が可能だ。たとえば、常に一定額を取引明細なしで引き出している顧客には引き出し額を提示し、明細の要・不要の確認画面を省略するなどだ。顧客が前もって画面カスタマイズをすることで、より円滑なATM利用を促進することもできる。さらに、住宅ローンや学資ローンなどをタイミングよく提案することも可能だ。こういった機能はカリグナイトを利用すれば実現できる。

ATMはインターネットと並ぶ重要な非対面チャネルだ。顧客ごとにきめ細かな対応をする洗練されたサービス提供が、コンビニATMから顧客を取り戻すことにつながるのではないか。